黒松の古葉取り | 大樹園
2020/12/24
黒松の古葉取り

みなさま、こんにちは。

12月も半ばを過ぎ、スーパーでは鏡餅が並び年末感がでてきましたね。

楽しい年越しを過ごすため、健康第一で乗り切りましょう!

(過去に年末インフルエンザ+胃腸風邪のダブルパンチを経験したことがあります…辛かった~)

 

さて。

メルマガで予告した通り、今回は「黒松の古葉取り」について。

「必ずしも毎年やるお手入れではない」ということを書きましたがどういうことでしょうか?

最初にポイントを押さえておきましょう。

 

古葉取りはどんな木にするお手入れか?

 ◎芽数が多く混んだ木

 ◎完成した姿を維持したい木

 ◎健康で元気のある木

逆に考えると、弱っている木には向かないのです。

これが「必ずしも毎年やるお手入れではない」という意味です。

 

毎年やるのが基本ではありますがまずは木の状態を見る

とても大切なことです。

 

 

それでは黒松の古葉取りの基本を。

◆古葉取りとは

去年の葉をすべて取り除くこと。お手入れ後はだいたい半分くらいの葉の量になります。

 

◆適期

11月頃~冬の間に。年末年始は見せ場も多いのでそのタイミングに合わせる方もいらっしゃいます。

 

◆古葉取りの意味

1.新しい芽の準備を促す

葉が急になくなり水を吸い上げる力が減ることで木が「これはマズい!!」と危機感を覚えます。

そこで新芽を出そう頑張るようになります。

 

2.日当たり・風通しが良くなる

芽切りをした樹は子はと古葉と2番芽でごちゃごちゃになり密な状態になっています。

古葉を取り除くことで、今まで日が当たりにくかった枝元の培養条件が改善されるため、これも1と同じく芽吹きを促します。

内側にある芽も守り、育てることができます。

 

3.木全体のパワーバランスが整う

内側の小さく弱い芽→触らない

前からある強い葉→古葉を取られ力を押さえられる

全体がバランスよく育つよう調整します。

 

4.見た目がよくなる

古葉取りをしながら輪郭を乱す葉も抜いていくので、姿が整いきれいに仕上がります。

 

 

基本を踏まえて、「古葉取りをやらない場合」はというと…

1.木・芽が弱っているとき

葉を取る=吸水力が弱くなる…余計に弱ってしまいますね。

元気がないときは少しでも多く葉をつけておいて体力を回復することのほうが優先です。

大樹園では、元気がつくまでは何の手入れもせず放置することもザラにありますが、

その期間は長いときで3年に以上に渡ることもあります。

 

2.完成していない、芽数がスカスカの木

〇そもそも葉が少ないのなら日当たりや風通しは良い環境なので古葉取りの意味があまりありません。

〇葉があるというのは「力がのっている」状態。スカスカなら葉を残し「のった」状態にするのほうが大切。

スカスカとはいえ元気であれば、古葉を取ってしまいたい気持ちもわかりますが、そこはぐっと我慢。

茶っぱと下っ葉だけを取って見た目を整える程度にし、力を蓄えることを優先しましょう。

→ここで力を温存しておくことで、次回の芽切り時に威力を発揮することになります!

 

 

では実際に手入れの流れを見てみましょう。

 

これがお手入れ前。

とってもボリューミーです(笑)

まずはしっかり観察して、取り除く必要があるか・バランスはどうかを確認しましょう。

この樹は左のほうが芽数も葉数も少ないので、左右のバランスを整えるために左は古葉をあえて残していきます。

先に完成したものを。

 

まずは右側の作業完了後。

作りかけの下枝以外は古葉を全て取り除きました。

 

右側の樹冠部の作業後。

 

左の樹冠部の作業前。

作業前でも作業後の右樹冠部より葉量が少ないのがお分かりいただけるでしょうか?

左右のバランスを整えるために、左側は古葉を残しながら枝棚の輪郭だけきれいに整えていきます。

 

右側中段。

元気よく芽数も揃ってるので、ちゃんと古葉取りしました。

 

左側下段。

ここは力が弱いので下っ葉のみとり、古葉を多めに残しています。

 

作業完了後の左右を比較してみます。

 

 

作業前と作業後の比較をもう一度

作業前

作業後

この樹のように同じ樹の中でもバランス調整が必要な場合があります。

ただ単純に「適期が来たから古葉取りをしよう!」ではなく、

作業前に全体の様子をよく観察して、

①そもそもやる必要があるのか?

②パワーバランスはどうか?

などの情報を精査し、その樹に適した手入れをしてあげるよう心がけましょう。

 

 

ここまで読んでいただき、「なんか聞いたことあるような話だなぁ」と思った方、素晴らしいです!

この考え方は「黒松の芽切り」と似たお話です。

まだ読んでいない方は併せてご覧いただけるとうれしいです。

↓「黒松の芽切り」↓

https://bonsai-daijuen.com/2020/06/08/%E9%BB%92%E6%9D%BE%E3%81%AE%E8%8A%BD%E5%88%87%E3%82%8A/

 

古葉取りも芽切りも「なぜその手入れが必要なのか?」という本来の目的に加え、

前提として、「力が乗っていて健康である」という条件があることを忘れられがちです。

体力を落としすぎてしまい健康な状態を保てなくなってしまうのでしたら本末転倒ですので、

それぞれの意味を知ることで、単純作業ではなく、健康で美しい姿を保ち続けるための本来の手入れにしていきましょう!