皆さん、こんにちは!
2023年の春から、フランスで開催しているワークショップ「Achademy Bonsai」の講師を担当させていただきました。
もともとは大樹園一門の先輩が行っていたのですが、縁があり一時期の間代理を務めさせていただきました。

これまで2023年から3年間、春と秋の6回フランスを訪れて、延べ5都市で盆栽教室を開催。
展示会とは違い、参加者一人ひとりとじっくり向き合い、熱心に盆栽を学ぶ彼らの姿に触れる中で、たくさんの発見と刺激がありました。
このブログでは、その貴重な経験やエピソードと、改めて感じた「盆栽の真髄」について、お伝えできればと思います。
フランスの盆栽熱、半端ない!「Achademy Bonsai」での挑戦
目次
「Achademy Bonsai」は、その名の通りいわゆる展示会ではなく、ひたすらワークショップをする盆栽教室巡業。
朝9時から夜18時までが1コマ。3日間のクラスを5、6都市で、ひと月近くの日程でもうみっちり盆栽漬けの日々でした。
1クラスにつき10~15人くらいの生徒さんが参加されます。
みなさん、自分の盆栽を持ってきて、剪定したり針金かけたり、真剣そのもの。


日本の盆栽教室では意外とやらない「基礎」や「樹形の定義と作り方」、「席飾り」や「季節の手入れ」といった座学も、1時間半ほど行いました。

日本独特の表現をお伝えするのは骨が折れましたが、僕自身も改めて基礎を見つめ直す良い機会にもなりました。
相変わらずここでも大変だったのは、言葉の壁。やはり英語は勉強すべきですね。
フランスと日本での盆栽の広がり方の違いも印象的でした。
フランスでは趣味で始めた人たちが集まって楽しむことがきっかけとなり、いわゆる愛好家の方々がコミュニティを作っています。
その中で“盆栽を教えてもいいライセンス”制度というものがあるそうです。
フランスならではの盆栽文化が育っていることを嬉しく感じる反面、日本では気にしないルールや決まりがライセンスの中に組み込まれており、それが本来の盆栽の表現をちょっと狭めてしまっている部分もあるのかな、と感じました。
参加者の皆さんが持ち込む素材も本当に色々で、日本の教室ではあまり見かけないような、ボサボサで手入れが難しい荒木も少なくありませんでした。
「本場から盆栽師が来るなら難しいものの手入れを教えてもらおう!」という感じでしょうか(笑)
プレッシャーもありましたが「何とかしてあげたい」という思いも強くあったので頑張ってきました。


限られた時間の中で、生徒さん一人ひとりのレベルに合わせて、一番良いアドバイスをするのは苦労もありました。
それでも、彼らの盆栽への熱意は本当にすごかった!
公民館で教室をやっていた時には、隣の体操教室の子供たちも興味津々で覗きに来てくれたこともあって、純粋な好奇心って国境を越えるんだなぁって、心が温かくなりました。


日本とフランス、盆栽が繋ぐ文化の面白さ
フランスの盆栽愛好家の方々は、自分で山に入って素材を探してくる「山採り」にも積極的に挑戦しているんです。この情熱は本当に素晴らしいですよね。
一方で、彼らが持っている「ライセンス制度」という独特の文化は、僕にとって大きな発見でした。
専門知識を持つ方が増えるのはもちろん良いことなのですが、その制度が「こうあるべき」という固定観念を生み出して、盆栽本来の自由な表現や多様性をちょっと邪魔しているように感じられる場面もありました。

日本の盆栽は、長い歴史の中で培われてきた「型」があって、その型を学ぶことがすごく大切にされますよね。
でも、その型にこだわりすぎると、かえって本当に伝えたい本質を見失ってしまうこともあるんじゃないかと考えています。
フランスでの経験を通して、改めて 盆栽の「思想」を伝えることの重要性を強く感じました。
テクニックだけじゃない!盆栽に宿る「物語」と「世界観」
「Academy Bonsai」を通じてもっと伝えなきゃ!と思ったのは、盆栽の**「テクニック」だけではなく「思想」の部分**なんです。
多くの方が盆栽を「形を整える技術」として捉えがちですが、「盆栽は背景を想像して楽しむもの」だと思っています。

例えば、茶室に飾られる掛け軸の位置一つにも、深い意味が込められています。
掛け軸を真ん中じゃなくて横に飾ることで時間の流れを表現したり、木にかぶるように飾ることで自然への畏敬の念を表したりと、飾りつける位置を少し変えるだけでもそこには異なるストーリーが生まれるんです。
木が主役なのか、それとも太陽への畏敬の念を表現したいのか。そういった**「世界観」**を盆栽で表現することこそが、その深みを生み出します。
フランスの生徒さんは、技術的な習得にすごく熱心な方が多かったのですが、僕は彼らに「この盆栽がどんな場所で育って、どんな時間を経てきたんだろう」という背景を想像する楽しさも知ってほしいと思いました。
盆栽にこんなに夢中だからこそ、伝えていきたい。
盆栽は、ただの植物の集まりじゃありません。
そこには、作った人の思いや、自然との対話、そして無限の物語が詰まっているのです。
後世に繋いでいく、盆栽の「厚み」と「情緒」
今回のフランスでの経験は、僕自身の「教え方のあり方」を深く考えさせられるものとなりました。
わざわざお金を払って、遠くから学びに来てくれる生徒さんの熱意に応えるには、表面的な技術だけじゃなくて、もっと深く、**盆栽の持つ「厚み」**を伝えなきゃいけないと強く感じたんです。
盆栽の「厚み」は、技術の奥にある思想であり、自然への畏敬の念であり、そして人生観にまで通じるものだと思っています。
この厚みがなければ、盆栽はただの造形物で終わってしまうんじゃないかと。後世に盆栽を伝えていくためには、この厚みの重要性を、もっと分かりやすい形で、そして心に響く形で伝えていく使命感を強く感じています。
フランスの土に触れて、フランスの人々と交流する中で、僕は改めて盆栽が持つ計り知れない可能性と、それを伝えることの喜びを実感しました。


盆栽は言葉を超えて、文化を超えて、人々の心に響く芸術です。この素晴らしい文化を、これからも世界に広めていくために、僕はこれからもこの旅を続けていきたいと思っています。
まとめ
フランスでの「Achademy Bonsai」は、いつもの盆栽教室以上に盆栽師として学びがたくさんある時間となりました。
異文化の中で盆栽の本当の面白さを伝える挑戦であり、僕自身の盆栽観を深める本当に貴重な経験でした。


技術を伝えるのはもちろん大切ですが、それ以上に盆栽が持つ「物語性」や「世界観」、そして**「思想」**を伝えることの重要性を強く感じました。
自然の情緒や侘び寂を感じとることでまだまだ成長していくと思います。
盆栽は、見る人の想像力を掻き立てて、無限のストーリーを紡ぎ出す芸術です。
その奥深さ、そして日本ならではの情緒を、これからも世界中の人々に伝え続けていきたい。
それが、老舗盆栽園の四代目としての僕の使命であり、Academy Bonsaiでの経験が、その思いを一層強くしてくれたました。
皆さんにも、ぜひ盆栽の奥深い世界に触れて、自分だけの物語を見つけてみてほしいなと思います。
盆栽大樹園
創業1934年 黒松盆栽の匠 |販売・レンタル・盆栽教室で愛好家から初心者まで
DAIJUEN BONSAI – Excellence in Traditional Bonsai Art Since 193
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