みなさま、こんにちは。
植物が元気になるこの時期。
盆栽に限らず鮮やかな緑や花に目を奪われますね。
GWにはなんとかイベントも開催することができました。
足を運んでくださったみなさま、ありがとうございました。
さて、今回は以前からご質問が多かった「黒松の葉透かし」について。
以前、古葉とりの記事で取り上げていますが、今回はさらに深堀りしてみたいと思います。
みなさんの疑問や悩みを解決する糸口になれば幸いです。
そもそも葉透かしとは何でしょう?
基本であり最も重要なポイントなので葉透かし経験者の方もご一読くださいね!!
◎目的◎
・木全体の枝葉の強弱・バランスを整える。
・芽切り後に出てくる2番芽の力が均等になるよう調整する。
・芽切り後の2番芽の量の促進
★作業としては近い黒松の古葉取りについてもチェックしてみるといいですね。
古葉取りは姿を整えることと、日照条件など生育環境改善がメインです。
目的が少し異なりますよ~!
◎作業◎
強い芽の葉を減らす!
★葉すかしすると一旦貧相になりますが、芽切り後にはまたたくさん葉がでてきます。
芽数の少ない作りかけの木ほど大丈夫か?ってくらい寂しくなってしまいますが、一時的なものなのでご安心ください。
参考までにBefore&Afterを。
既に芽数の多い木なので、写真上では僅かな変化ですが、これくらい変わります。
<Before>
<After>
◎適期◎
適期については諸説ありますが、よく古葉取りと混同されてしまうので両方書いておきます。
◇古葉取り:11月頃〜
→これより早いと2番芽が完全に固まっておらず、葉を傷つけやすいです。
古葉取りと同時に葉透かしまでやってしまうと、寒い冬を越すのに葉数が少なすぎて心許ないです。
◇葉透かし:3月中頃〜
→葉透かしは一言でいうと葉数調整による光合成量の調整です。
つまり成長期でない時期にやっても本来の効果を発揮しきれません。
寒い時期は葉数を残し寒さから守ってやりつつ、成長期を迎える頃に葉数を調整し、芽力をコントロールしてあげます。
ちなみに大樹園では管理している黒松の鉢数があまりに多いため、古葉取りは春までに、葉透かしは芽切り直後までに終わらせようと気長にやっています。
もちろん適期に早くやったほうが効果は高いんですけどね。。
◎やらない場合◎
芽切りの時と同じく、力のない木はやめましょう。
ただし「芽切りしない≠葉すかししない」です!
植え替えをしたため芽切りしない鉢でも、強い芽が多ければ葉透かしをして調整してあげます。
黒松の芽切りのブログでもくどくど行っておりますが、
「何が目的か?」をしっかり意識しましょう!
「3月になったから葉透かしだな~」ではなく、木の体力を見極め、
全体的に力が弱すぎる場合には作業をしないというのも選択肢の一つであることをお忘れなく!
実際の手順ややり方について解説していきます。
◇やり方◇
① 作業前にまずは樹全体を見回して観察し、樹全体の芽力分布を5段階で評価し把握しておきます。
② 樹全体を5ブロックに分割し、①で観察した芽力に応じた葉数を決定します。
③ ①②の段取りをキッチリできたら、ようやく作業開始です。強い芽の葉を抜いていきましょう。
特に①②は葉透かし作業の肝なので、詳しく解説していきますね。
① 芽力を 非常に強い、強い、普通、弱い、非常に弱い の5段階で評価します。
今回の黒松でいうとこんな感じです。
あくまでもこの黒松の場合ですので、非常に強いとか、非常に弱い芽は存在しない場合もあります。
② 樹全体をX軸(縦方向)3段階、Y軸(横方向)2段階で考え、計5ブロックに分割する
〇X軸(縦方向):樹冠・真ん中・下枝 (3ブロック)
小品の場合は上部・下部の2ブロックでいいと思います。
〇Y軸(横方向):枝先 、枝元
整理するとこんな感じの5ブロックになります。
①樹冠
②真ん中の枝先 、③真ん中の枝元
④下枝の枝先 、⑤下枝の枝元
★樹冠は大物以外ほぼ全て枝先と考えています。
このブロック分けをしないといけない理由ですが、元々の芽力以外にこの位置関係も力の強弱に大きく影響するからです。
樹冠は日当たりが良いので強くなりやすく、下枝になればなるほど力が乗りにくくなります。
枝元と枝先の関係も同じで、当然枝元のほうが日当たりが悪く弱い芽になりがちです。
◆強い場所を順に並べてみると…
① > ②> ③,④> ⑤
の順で、だんだんと力が弱くなっていくイメージです。理論上の話ですが。
前置きがずいぶん長くなってしまいましたが、これで定義付けは終わりです。
③葉透かし作業
強い芽ほどたくさん葉を抜いていくのですが、感覚でやってはいけませんので、きちんと枚数を決めながら作業します
基準となる樹冠部の葉数はこんなかんじです。
非常に強い⇒3枚まで減らす
強い⇒3~4枚に
普通⇒4~5枚に
弱い⇒下っ葉を取る(見た目を整える)・触らない
非常に弱い⇒触らない
これを基準とし、各ブロックごとの葉数を決め、弱いところほど多く残すよう調整していきます。
●例1:②真ん中の枝先
非常に強い⇒3枚 , 強い⇒4~5枚 , 普通⇒5~6枚 ,
弱い⇒下っ葉を取る(見た目を整える)・触らない , 非常に弱い⇒触らない
●例2:③真ん中の枝元と④下枝の枝先
非常に強い⇒4枚 , 強い⇒5~6枚 , 普通⇒6~7枚 ,
弱い⇒下っ葉を取る(見た目を整える)・触らない , 非常に弱い⇒触らない
●例3:⑤下枝の枝元
非常に強い⇒ない , 強い⇒6~7枚 , 普通⇒7~8枚 ,
弱い、非常に弱い⇒触らない
① > ②> ③,④> ⑤
をしっかり頭にイメージして、弱いところほど多く葉を残し、芽切り後にピシッと葉が揃った姿を目指したいですね。
◇まとめ◇
・木の全体の力のバランスを観察
・葉を減らすときはブロック・場所も考慮する
・力が弱い箇所は触るべからず
◆葉の取り方◆
さぁ、実際に手を動かしましょう!ポイントは2つ。
・外側から取る
・全方向にバランスよく葉を残す
右の写真では強い芽と弱い芽で差をつけているのがわかるでしょうか?
それでは最後に各ブロックのBefore&Afterを見てみましょう。
いかがでしょうか?
樹冠ほど葉数が少ないので見た目が薄く、下に行くほど濃くなっているのがわかるでしょうか?
これで葉透かし作業は完了です!
くどいようですが…
どんな作業も適期だからするのではなく「目的」が何か知ったうえで始めましょう。
そして「観察」すること。
どんなにこまめに手入れをしてもそれが必要ないものだったら木を傷めてしまうことも。
★併せて6月頃に適期となる芽切りについても復習してみてください。
少々理屈っぽい回となりましたが、わかりづらいことはご質問くださいね!
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