みなさま、こんにちは。
6月に入り、次々と梅雨入りしてまいりました。
今回は大樹園の代名詞でもある黒松の手入れについてお話させていただきます。
「黒松の芽切り」です。「短葉法」とも呼ばれます。
●黒松の新芽を切る
●時期としては6月初旬~7月下旬。と言っても、地域によって気温や天候の差が激しい時期です。
中部地方にある当園では細かく分けるとこんな感じで行っています。
大物:6月初旬
中品:6月20日以降くらい
小品:7月中旬~
土の配合や地域によって若干の誤差がありますので、樹をよく観察し、お住まいの地域に合わせて時期を調整してくださいね!
※ちなみにですが、黒松と同じ様に赤松も芽切りをすることができます。
ただし、赤松の方が2番芽が伸びにくいので、上記の時期を参考に
黒松よりも半月ほど早めに切り始めた方がいいですよ。
芽切りをする理由は大きく3つです。
1.芽を切ることで葉の長さを短くする
2.切る時期によって樹全体のサイズに合わせた葉の長さに整えられる
3.芽数を増やす(1芽~3芽に)
ではさっそくポイントをご紹介・・・の前に。
まずは樹が元気な状態かしっかりチェックしてください。
最近はあまり見かけませんが、芽切りについて当園を取材いただた記事で、
昔はこんな注意書きが書かれていました。
「この方法は大樹園の適切な培養管理があるからこそ可能な方法です。」
・・・この意味とは?
「芽きりは毎年やるものではなく、元気な樹にするお手入れ」
ということです。これ、めちゃくちゃ大事です。
「芽切りをしないと間延びして輪郭が崩れてしまう」と考え、樹の状態にかかわらず毎年芽切りをし続けている方をよく見かけます。
しかしその結果、枝に力が乗らず枝分かれしない状態がつづき逆に間延びしてしまったり、ヘロヘロの弱い枝になってしまう、ひどい時には枝枯れしてしまうなどの弊害が起こります。
そうならないよう当園では、植え替えをした年や病気などで元気がない時など、春に伸びた新芽がそれほど良い状態ではない場合は芽切りをしません。
毎年管理している黒松の1/3くらいは芽切りを休んでいるイメージです。
少しでも不安がある場合は無理に芽切りをする必要はありません。
芽切りの前にはまず樹の状態を見てあげましょう!
前置きが長くなってしまいましたが、それくらい大切なことなんですよ!
◇芽切りのやり方
今回お手入れするのはこちらの黒松です。
基本的に、春に伸びてきた新芽を元からすべて切り取ってしまいます。
ポイント1 根元まで・軸を残さず切る!
軸がが残っている分、新芽の準備が遅れ、2番芽の伸び始めが遅れます。
結果、狙った長さより短く仕上がってしまうことがあります。
ポイント2 水平に切る
斜めに切ってしまうと、軸が残っているところとそうでないところができてしまいます。
そうすると、一つの芽の中でも長い芽と短い芽が出てしまうなど、バラつきができてしまいます。
【良い例】芽の根元までしっかりカット。切り口も水平です。
【悪い例】軸が残っている。切り口が斜めになっている。
思い切って際まで、そしてまっすぐ切りましょう!
ポイント3 脇芽を残さない
脇芽があると二番芽が出てこず、脇芽だけが成長します。
ゼロからやり直しの部分と比べるとスタートが早くなってしまいますので、
他の芽と長さが揃わなくなります。
〇の部分が脇芽。これも切っておきましょう。
冒頭でご紹介した通り、「芽切り」は芽の長さを調整するのが目的です。
芽を切るだけでなく、芽切りの時期によっても整えていくことができます。
◇芽力に強弱がある場合の調整方法
一本の樹の中でも当然ながら強い芽・弱い芽があります。
この芽の力の強さは、そのまま2番芽の伸び具合に比例します。
何もせずにただ芽切りだけを行うとこの差が如実に出てしまい、
葉の長さがバラバラになってしまったり、芽が出ないところが出てしまったりします。
この問題を解決するための調整方法がいくつかあるのでご紹介します。
◎方法1:葉透かしをする
強い芽の葉を減らし、逆に弱い芽はたくさん残しておくことで力を均等にしていきます。
葉を取ると光合成量が減るので、強い芽の力を抑えられるし、その分弱い芽の方に抑えられた力が分散するので強くなります。
葉透かしは芽切り時に同時に行ってもいいですが、3月頃からスタートできます。
ある程度時間のかかる作業ですので、予め行っておくことで芽切り作業の時短になります。
【芽切り前】
【葉透かし例】
・頭の強い芽は葉数を3枚まで減らしています。
これを基準に平均的な芽は4、5枚。・弱い芽は触らない。
といった感じで力の調整をします。
・さらに中品程度までだと上下の2ブロック、大物は上中下の3ブロックに分け、
一番上を基準に、下に行くほど葉数を多く残していきます。
・同ブロックでも枝先とふところで力の差が出てきます。
これも意識しながら、同じくらいの力でも懐の方が1枚余分に残すなどで調整します。
◎方法2:切らない
①力がごく弱いものや、内側にある弱い芽は切らずに残しておきます。
切らなくても切った芽と同じくらいの強さにしかなりませんし、
無理に切ると2番芽が出ずさらに弱ってしまい、いずれ枝枯れしたりします。
②強い芽でもあえて切らずに残す場合があります。
・輪郭に対して枝棚が短い時先端の芽だけ切らずに残して枝を伸ばします。
・枝に力がなくひょろひょろの場合にも先端だけ残して力を乗せたりします。
③なんなら芽が元気でも枝に力がない場合は芽切りを休み、全体に力を乗せることを
優先することもあります。
冒頭でも説明しましたが時には切らないという選択の方が正解の場合もあるんです!
芽切りは絶対に毎年しなければならないという固定概念は捨ててくださいね。
◎方法3:芽切りの時期をずらす(二度芽切り)
①枝先の弱い芽や平均的な強さの芽を適期に切ります。
②2週間ほど後に、強い芽やごく強い芽を切ります。
強い芽は時期をずらした分、2番芽の準備が遅れるので、伸び過ぎを防止できます。
◎方法4: 強い芽の軸をあえて残す
軸を残すと、樹が新芽がなくなった理解するまで若干の時差が生まれます。
その分2番芽の準備に時差が生まれ、伸び過ぎの防止につながります。
前述の芽切りで「根元まで切る」ことをポイントとしてお伝えしましたが、その逆をするということですね。
ただし、この方法では実際にどれくらい時期をズラせるのかが明確でないので、
細かい長さの調整がしにくいのが正直なところ。
他の方法と比べるとあまりお勧めはできません。
どうしても一回で芽切りを済ませないといけない時の裏技程度に思ってください。
さて、ここまでご紹介した「黒松の芽切り」。
当大樹園の初代 鈴木佐一が短葉法として広く世に広めたものです。
また、二代 鈴木俊則がこの手法をブラッシュアップし、葉を短くするだけでなく、
均一に揃った芽を出させる方法を確立したのが葉透かしです。
いずれも黒松盆栽の歴史に大きく影響し、新たなスタンダードになった革新的な技術でした。
盆栽の知識の一つとして・こちらのブログを読んでいただけたのも何かのご縁ということで、ぜひその歴史もご一読いただければ嬉しく思います!
【大樹園の歴史】
https://bonsai-daijuen.com/history/
【大樹園の作家】
https://bonsai-daijuen.com/history/sattka/
この時期は手入れがなにかと忙しいじきですね。
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