フランス|盆栽Albiデモンストレーション | 大樹園
2025/7/16
フランス|盆栽Albiデモンストレーション

フランス・盆栽Albiで2度目の海外遠征

Bonjour!(笑)

2017年にフランス南部Albi(アルビ)で開催された盆栽展示会「盆栽Albi」にて、デモンストレーションを務めさせていただいた時のお話をしていきたいと思います。

海外でのデモンストレーションはスロバキアに続き2回目。

日本を飛び出すのはまだまだ緊張の連続ではありましたが、飛び込んでいきたいと思っていた時期。

異文化の中で盆栽の魅力を伝えるという貴重な機会をいただき、心から感謝しています。

フランス盆栽デモンストレーションAlbi

フランスでの”盆栽熱”に触れる

海外盆栽デモンストレーションフランスAlbi
海外盆栽デモンストレーションフランスAlbi

Albiはフランス南部、トゥールーズからほど近い場所に位置します。

正直なところ、日本での知名度はそれほど高くないかもしれませんが、この地で開催される盆栽Albiには、フランス国内はもとより、スペインなど近隣国からも多くの盆栽愛好家が集結していました。

デモンストレーションの依頼をいただいたのは、以前、大樹園で勉強していた受けていたフランス人研修生のご縁から。

海外遠征は「もっとやってみたい!」と思っていた矢先で、「ぜひ日本人のデモンストレーターに」という熱いお声がけは、大変嬉しかったです。

実際、盆栽に対する熱量は予想外のものでした。

例えば、パリからわざわざ足を運んだ方(東京と岡山ほどの距離!)、スペインなど国外から参加された方も多く、その距離を厭わない情熱には本当に驚かされました。盆栽をこれほどまでに愛している人がいると肌で感じ、胸が熱くなりましたね。


ハプニング続きのデモンストレーション、しかし…

フランス盆栽デモンストレーションAlbi
フランス盆栽デモンストレーションAlbi

今回の海外遠征は、正直なところトラブル続きでした。

まず、デモンストレーションの内容が事前に明確に伝わっておらず、現地に到着するまでどんな木を扱うのか、どんなことをするのかが全くわからない状態。

さらに、スロバキアの時のような通訳がいない状況で、言葉の壁が大きく立ちはだかりました。
(スロバキアの時は通訳さんが常に近くでスタンバイしてくれていました)

そして、最も苦労したのは素材の選定です。

デモンストレーションで使用する木は検疫のこともあり日本から持ち込むことはできません。

現地で選ぶことになっていましたが、バリエーションが少ない上に決していい素材とは言えないものばかり。

日本の豊富な素材に改めて感謝するばかりでした。

今思えばフランスの盆栽自体、黎明期。盆栽らしくなりそうな素材を見極めるのも難しかったのかもしれません。

ヨーロッパの松が主な樹種でしたが、その中でも状態の良いっぽいものを選びました。

限られた選択肢の中で最高のパフォーマンスをどう見せるか、頭を悩ませました。

それでも、わざわざ”盆栽の生みの地、日本の盆栽士”を招待して盛り上げようという気概に応えるために、絶対諦めるわけにはいきません。

選んだ木は、正直に言って「よくするのが難しい」と感じるものでしたが、だからこそ腕の見せ所だと気合をいれて挑みました。。

日本の浮世絵師・葛飾北斎の絵を例に出しながら、素材の良さを最大限に引き出す方法や、盆栽における「見立て」の面白さ、表現の深みを伝えようと努めました。

海外盆栽デモンストレーションフランスAlbi
フランス盆栽デモンストレーションAlbi

言葉の壁はあっても、盆栽という共通言語を通じて、観客の皆さんに盆栽の深みを感じ取っていただけたと思います。

余談ですが、オマケのハプニングでまさかのホテルが予約されていないという事態も発生。

これも海外遠征の醍醐味と割り切り、一緒にチェックインする方々に助けていただき、野宿は避けることができました。予期せぬ出来事の連続となりましたが、度胸が鍛えられ、今となってはおもしろネタです。海外で仕事をするということは本当に驚きと刺激の連続です。


審査員として感じた「お国柄」と盆栽の多様性

今回の盆栽Albiでは、デモンストレーションだけでなく、展示された盆栽の審査員も務めさせていただきました。主な賞(1位から3位まで)を独断で選び、それぞれの盆栽について講評するという大役。

これもその場で頼まれて衝撃事件の一つでしたがいい思い出です。

その中でも特に印象的だったのは、スペインの方が手掛けた鉢です。

ガーゴイル(魔除けを意味する怪物の形をした装飾)や蝙蝠といったヨーロッパらしいモチーフがあしらわれた鉢に、現地の木が見事に調和していました。

見た瞬間、「これはまさにスペインの盆栽だ!」と感じました。

フランス盆栽デモンストレーションAlbi
海外盆栽デモンストレーションフランスAlbi

日本の盆栽をただ模倣するのではなく、自分たちの文化や感性を取り入れて昇華させている。

その自由な発想と表現に、強く心を打たれました。

他にも、ひびが入った鉢にローズマリーを合わせるという、非常にヨーロッパらしい、そして独特の美学を感じさせる作品や若い文人木の表現が非常に美しくまとまっているものもあり、世代を超えて盆栽が愛されていることを実感しました。

海外盆栽デモンストレーションフランスAlbi
フランス盆栽デモンストレーションAlbi

賞を取った方に贈られたお洒落な札も印象的でした。一つ一つの細部に「お国柄」が感じられ、文化が息づいていることを改めて認識させられましたね。


オリーブとの出会い、そして広がる表現の可能性

今回のフランス遠征で個人的に注目したのは、オリーブの盆栽です。

食のイメージが強いですが、フランスにおけるオリーブは食以外にも絵画の題材になったりと単なる農作物ではなく、歴史・文化・芸術に古くから根付いた存在です。

日本ではあまり見られない、樹齢を重ねた古いオリーブの木がそこにはたくさんあり、その古木感が本当に素晴らしかったです。

日本にはない樹種が、それぞれの国で盆栽として独自の進化を遂げている。

この多様性こそが、盆栽の懐の深さだと感じました。

盆栽は自由に表現していい」。

今回の経験を通じて、このメッセージを強く伝えたいと思いました。

日本で発展してきた盆栽の技術や美意識は確かに素晴らしいものですが、それに縛られる必要はありません。

それぞれの地域の気候や風土、文化を織り交ぜ、その国の感性で表現することで、盆栽はさらにおもしろくなると確信した出来事でした。


盆栽Albiを終えて:日本から世界へ、そして未来

海外盆栽デモンストレーションフランスAlbi

今回のフランス・盆栽Albiでの経験は、私にとって非常に貴重なものとなりました。

言葉の壁、素材の制約、ハプニングの連続。それでも、盆栽への情熱は国境を越え、多くの人々を繋ぐことを改めて実感しました。

日本から伝わった盆栽が、世界各地でそれぞれの文化と融合し、独自の発展を遂げている。その光景を目の当たりにし、「模倣」の段階を超えて「自分たちの文化」として盆栽を育んでいる様子に、深い感銘を受けました。

異なる文化や価値観に触れることで、日本の盆栽の表現の深みをさらに追求し、盆栽の面白さや楽しみ方を皆様に伝えていく。そんなことにつなげていきたいと感じています。

盆栽は、まさに生きる芸術です。型にはまることなく、自由に、そして大胆に表現することで、無限の可能性を秘めている。このメッセージが、この記事を読んでくださった皆さんに伝われば幸いです。

今後も、海外での経験を積極的に積んでいきます。

これからも、大樹園の挑戦にどうぞご期待ください!


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