みなさま、こんにちは。
春は樹種を問わずお手入れの多い季節。
今回はその中でも杜松の芽摘みをBefore&Afterでご紹介します。
以前にも杜松の芽摘みについてはこちらでもご紹介していますが、こちらは「完成した木を調整する」という基本の解説でした。
今回は「作りかけの木を将来を見据えて」芽摘みをする方法の一例です。
「仕上がった木にするための道のり」と言ってもいいかもしれません。
まずはBeforeの様子から。
2021年の10月です。
大樹園に来た時の様子。素晴らしいジンの持ち主。
しかしスカスカな部分が多く、葉の込み具合もまばら。
下枝が特にです。その点については今現在も成長を待っている状態です。
まずは植え替えから。
鉢が窮屈そうだったので大きくしました。六角の鉢から正方の鉢に変更です。
植える向きも一番映えるように変えました。
ここから枝棚を充実させるために伸ばしていきます。
2022年3月末
早くも新芽が伸びてきました。
でもまだまだ芽摘みをするには早いです。
樹勢を乗せ芽数を増やし、棚をはっきりさせるために、一度目の芽摘みはしっかり伸ばしてから行います。
5月上旬くらいまでは、整えたくなる気持ちをぐっと堪えます。
2022年5月
正面 Before
ここまで伸ばしました。
もじゃもじゃですね。
やるぞ~!!芽摘みしていきます。
まずは輪郭を整えます。
作りかけの木の場合、中の方に隠れている枝も引っ張り出してくることが重要です。
これをすることで、枝棚がだんだん密になってくるのです。
正面After
ばっさり!整えるとまだまだ下枝の芽が少なく、頭が色濃いのがわかります。
下枝は今も成長を待っています。
裏面 Before
こっちももじゃもじゃです。
これだけ元気がついた状態から芽摘みをすると2番芽の芽吹きの旺盛さにも期待できますね。
裏面 After
すっきり!
シャリをかみながらよく動いた幹が現れてきました。
頭 Before
頭部分をアップしてみてみましょう。よく芽が詰まっている様子がわかるでしょうか?
通常ならこの状態でも構いませんが、この木は下枝がスカスカなので、それに合わせてバランスを取るために、上部の枝も透かしてあげます。
頭 After
古葉取りと、混んでいる部分の枝を透かしました。
After
上から見た引きの図です。
頭と下枝が同じくらいの濃さに仕上がってるのがわかるでしょうか?
下枝の方は…何度も言いますがまだ隙間が多いのでほどほどに。
内側の方はほとんど摘んでいません。
After
表面 最終姿
完成です!!
芽摘み以外にも切り落とした枝があるので比べてみましょう。
ちょっと前
左丸の部分はせっかくのアピールポイントであるよく動いたシャリ幹が隠れてしまっています。
これをもっとよく見せるために、下枝を切り軽くしました。
右丸の部分もちょっと重たい印象です。
比べてみると最終姿はシャープな印象に変わったのがわかるでしょうか?
After 最終姿(裏面)
こちらも大きな枝を落としているので比べてみます。
ちょっと前
シャリ幹が引き立つように大きな下枝を切り、全体の輪郭を引き締めました。
昨年の10月の芽摘み時にはまだ切れませんでしたが、上の枝棚がしっかりしてきたので今回は落とす判断ができるようになりました。
一気に目指す姿にしようと、いらない枝や忌枝を全て落としていくと、パラパラな見栄えになったり、樹勢を落としたりします。
少し持ち込んで、準備が整ってからようやく切る。このような我慢の判断も、木の状態をよく見て時には必要ですよ!
「待つ」ことも技術の一つです。
【今回のポイント】
〇派手な動きのシャリ幹を際立たせました。
裏・表としましたがこれだけのシャリを持っているのでどちらを表にしても良いように仕上げています。
〇裏の枝をバッサリと切りましたが、育った上枝を降ろし、違和感なくバランスの取れた状態になりました。
〇シャープになった
〇それぞれの棚が育ってきた…まだまだ境目をはっきりさせていきます。
完全に仕上がったと言えるようになるのは少なくとも、もう1シーズン必要かなと思います。
最後に2021年10月と2022年5月の姿を比較してみましょう。
Before 2021年10月
After 2022年5月
まだ道半ばですが、7か月かけてこれだけの変化を遂げました。
杜松は比較的変化が早い樹種です。
手をかければ応えてくれると思うと面倒なお手入れも少し頑張れる気がしませんか?
春の芽摘みは杜松にとって本当に大切な手入れ。
困ったときはご相談くださいね。